
キッチンカーは、そこでしか出会えない料理に対するワクワク感や、食べるまでの手軽さが魅力です。集客手段としてキッチンカーを利用してみたいけれど、食中毒などのリスクについて知りたいという方も多いのではないでしょうか。この記事では、キッチンカーの食中毒対策について解説します。キッチンカーの活用例も紹介しますので、参考にしてみてください。
1. キッチンカーの需要と人気

キッチンカーは年々増加しており、需要がうかがえます。保健所が発表する「食品衛生関係施設数」において、2021年時点の自動車での飲食店営業は3,377件でした。これは、2017年の2,575台と比べると30%近く増加しています。店内での飲食と異なり、屋外で外食する開放感や、手軽に食べられることが人気の背景にあります。
2. 飲食業で起こりうる食中毒の原因

キッチンカーを含む飲食業において、対策すべきリスクのひとつが食中毒です。2022年に報告された食中毒の件数は962件で、そのうち39%にあたる380件が飲食店で発生しているとされています。飲食業で起こりうる食中毒の原因には、どのようなものがあるのでしょうか。
2-1. ウェルシュ菌
ウェルシュ菌が原因の食中毒件数は多くありませんが、食中毒が起きた場合の患者数は多くなるのが特徴です。食肉や魚介類などを使い、加熱した料理を数時間から一晩ほど室温で置かれた場合に多発しています。調理してから食べるまでに時間があく場合は、小分けにして低温で保存し、食べる前に十分に再加熱することが予防につながります。
2-2. ボツリヌス菌
食品に混入したボツリヌス菌が増加し、ボツリヌス毒素を作り、それを口にすることで起こる食中毒です。真空パックや缶詰、瓶詰めなど酸素が少ない状態になることで、菌が増殖しボツリヌス毒素を作ります。ボツリヌス菌は増殖時に悪臭とガスをだします。真空パックされた食品や缶詰などが膨らんでいたり、開ける際に異臭がしたりする場合は食べないようにすることが重要です。
2-3. カンピロバクター
カンピロバクターは、食中毒発生件数において頻度の高い原因のひとつです。5~6月と9~10月、冬季に多く発生しています。食肉の十分な加熱調理や生肉を食べないようにすることが効果的です。生で食べるもの(サラダなど)への二次感染を防ぐことも重要です。また、調理器具やお皿などを清潔に乾燥させて使用することも対策につながります。
2-4. サルモネラ菌
サルモネラ菌による食中毒は、患者数が多い大型の事例になる傾向があります。近年の食中毒の原因として腸炎ビブリオと並びトップクラスです。サルモネラ菌は自然界のどこにでも生息しており、ペットや家畜、鳥類などが保菌しています。食肉や鶏卵など原因になる食品を低温で保存・管理し、調理時や調理後の汚染防止が対策するうえで重要です。
2-5. ノロウイルス
ノロウイルスは冬型で、秋から春先にかけて発症者が多くなります。汚染されたカキを含む二枚貝などを、生のままや十分な加熱処理を行わないで食べたりすることで感染します。主な症状は嘔吐や下痢などです。感染した小さな子どもや高齢者の介助をする際に2次感染することもあります。
2-6. その他
上記のほかに、カビ、ヒスタミンやふぐ毒などによる食中毒があります。これらの原因に対しても、一般的な食中毒対策としてしられる「つけない」、「増やさない」、「やっつける」の徹底が重要です。次のような対策が有効です。
- 適切な手洗いの徹底
- 食肉や魚介類など生のまま保存するものはすぐに冷蔵・冷凍する
- 鮮度が落ちた食材を使用しない
- カビの生えたものは食べない
- 調理器具を洗浄・消毒する
- 食材を十分に加熱する
- 調理場を清潔に保つ
3. キッチンカーが食中毒を起こさないための安全対策

すべての食品等事業者は、HACCP(ハサップ)に沿って衛生管理することが、政府により制度化されています。HACCPとは、食品事業者自ら使用する原材料や製造方法に合わせ、計画を作成・管理する衛生管理の方法です。中でも小規模な事業者は、食品等事業者団体が作成し、厚生労働省が発表している「HACCPの考え方をとりいれた衛生管理の手引き書」にもとづき実施していくことと決められています。小規模な営業者が実施することは以下の通りです。
- 手引き書の解説を読み、自分の業種・業態で危険要因が何かを理解する
- 手引き書のひな型を利用し、衛生管理計画と手順書を準備
- 衛生管理計画と手順書の内容を従業員に周知
- 衛生管理の実施状況を記録(手引き書の記録様式を利用)
- 手引き書で推奨されている期間、記録を保存する
- 記録などを定期的に省み、必要であれば衛生管理計画や手順書の内容を見直す
4. 食中毒予防のためにキッチンカーが取り組むこと

キッチンカーの営業では、HACCPにもとづいて衛生管理と同時に調理場の整備を行うことで、食中毒対策につながります。調理場の整備について参考にするべき指標が「5S」です。5Sでは、整理・整頓・清掃・清潔・習慣の5項目についての取り組みが推奨されています。
4-1. 整理
必要以上の器具は撤去します。調理場に関係のないものや捨てるべきもの、私物は置かないようにすることが大切です。整理しておくことで清掃を徹底して行えるうえ、虫のすみかなどの要因を取り除けます。
4-2. 整頓
整頓では、物の定位置を決め、従業員が誰でも片付けられるように表記すると効果的です。置く場所を決めて管理することで、限られたスペースを有効に使えるうえ、きれいな状態を保てます。
4-3. 清掃
- 虫がいないか
- 蜘蛛の巣の有無
- カビの発生
- 汚れなどを確認・除去
清掃する際は、上記を確認しながら行います。従業員が同じ水準で清掃できるよう日々の清掃ルールを決め、徹底して行うことが大切です。虫等が発生しないよう、侵入しそうな経路を防ぐことも対策につながります。
4-4. 清潔
目に見えない菌の汚染防止についても対策できているか確認します。食品等に直接触れる器具などは、拭き取り検査などを用いてチェックすることが重要です。
4-5. 習慣
決まった時間に清掃を行い、衛生管理計画の確認を習慣化します。衛生管理計画や手順書の内容を、実施・記録・確認を習慣にして定期的に見直すことで、衛生環境の整ったキッチンカーを実現します。
5. キッチンカーに期待できるこれからの活躍

令和3年に、HACCPに沿った衛生管理が制度化され、安全対策が一定水準で行えるようになりました。各市町村などにおいて、キッチンカーを導入する動きもみられます。
- 人口の減少や高齢化などが課題の、郊外にある住宅団地などにキッチンカーを配置
- 市役所などの庁舎にキッチンカーを導入、活性化を図る
手軽に食べられ、どのような料理に出会えるかを楽しめることが、キッチンカーの魅力です。地域活性化や集客の手段として、今後もキッチンカーの利用増加が期待できます。
6. まとめ
飲食を扱うキッチンカーは、政府の制度にもとづいて衛生管理を行っていることがわかりました。衛生管理を徹底して行うことで、食中毒対策につながります。安全対策をしたキッチンカーは、地域活性化をはじめ、人を集める手段として今後も発展が期待できる業態といえるでしょう。
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